「あさきゆめみし1」(大和和紀)

源氏物語に迫るための資料の一つとして

「あさきゆめみし1」(大和和紀)
 講談社漫画文庫

光源氏は、
類い希なる美貌とともに
学問や芸能に
秀でた才を発揮する。
源氏は葵の上と結婚するが、
空蝉や軒端の荻、夕顔、
そして継母・藤壺とも関係を結ぶ。
藤壺が出産した男子は、
源氏と瓜二つともいえる
美しい顔立ちであった…。

以前取り上げた瀬戸内源氏よりも
取りかかりやすいのが
(当たり前ですが)、
大和和紀執筆の漫画
「あさきゆめみし」です。
読書が趣味である私は、
漫画も好きです。
しかし「漫画を読むのも読書の一つ」とは
決して考えていません。
漫画はあくまでも漫画であり、
いくら読んでも「読書した本」として
カウントすることはできないと
考えています。
でも私を含め、
語学力に乏しい一般人にとって
古典の世界は、
あの手この手を使わないと
作品に迫ることができないのも
また事実です。

瀬戸内源氏は読みやすいものの、
瀬戸内寂聴ならではの感性が
訳出した文章に現れています。
性的場面がやや情熱的に
描かれているように感じられるのです。
谷崎源氏は、
必要最小限の現代語訳であり、
平安の雅な雰囲気を
最大限残しているのですが、
理解が難しいのが難点です。
いずれの訳文も、
訳者の嗜好や思考が、
大なり小なり反映されているのです。

古典の現代語訳でも、
海外作品の日本語訳でも、
そのもととなる作品に
可能な限り接近しようとする場合、
複数のものから多角的に迫るしか
方法はないと考えます。
原文を直接味わえない以上は。

そう考えたとき、漫画といえども、
本書は源氏物語に迫るための
資料の一つになり得ると思うのです。
源氏物語のように、登場人物が多く、
かつ主語が省略される傾向にあり、
誰が話した台詞か
判別しにくい部分なども、
当然一目でわかります。
また、当時の貴族の服装や宮中の様子が
容易に飲み込めるのも
漫画ならではです。
高校生あたりが
手軽に作品に接するための
一つの方法だと思います。

ぜひ学校図書館に
置いてほしいと考えます。
コミックス版に比べ、この文庫版は
表紙も落ち着いた感じとなり、
図書館の本棚に並べても
違和感はないと思います。
古典読解のための資料として、
価値の高い本だと思います。

高校生の皆さん、「ワンピース」も
「鬼滅の刃」もいいのですが、
この「あさきゆめみし」も面白いですゾ!

(2020.3.14)

GaddictによるPixabayからの画像

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